Excelの「OR」関数は、データ分析や条件付き書式を設定する際に便利なツールです。
複数の条件を同時に評価し、少なくとも一つの条件が満たされた場合に「TRUE」を返すこの関数は、複雑なデータのフィルタリングや強調表示に役立ちます。
本記事では、OR関数の基本的な使い方から応用例、注意点までを詳しく解説し、データ分析をより効率的に行う方法を紹介します。
「OR」関数とは
OR関数とはどのような関数であるかについてみていきましょう。
基本的な概要
OR関数とは、設定した複数の条件の内、1つでもその条件を満たすものがあるかどうかを判断するために用いられる関数です。「または」を表現するのがOR関数であり、引数で指定したいずれかの条件に当てはまる場合には「TRUE」が返され、すべての条件に当てはまらない場合は「FALSE」が返されます。
書式
OR関数の基本的な書式は次の通りです。
=OR(論理式1, [論理式2], …)
引数 | 詳細 |
論理式 | 評価を行う条件を設定します。 論理式は、最大255個まで追加することができます。「論理式2」以降は省略可能です。 |
「OR」関数の使い方
具体例を交えて、OR関数の使い方を解説します。
基本的な使い方
単純な条件を例に、OR関数の基本的な使い方を解説します。
①「A1」セルの値が10より大きい、または「B1」セルの値が20未満である場合に「TRUE」を返すといった条件で検索します。
この場合のOR関数の数式は次の通りとなります。
=OR(A1>10, B1<20)
②「A1」セルの値が10〜20の間である場合に「TRUE」を返すといった条件で検索します。
この場合のOR関数の数式は次の通りとなります。
=OR(A1>=10, A1<=20)
複数条件の使用
OR関数は、最大255個まで引数で条件を設定することができるため、これによって複雑な論理判断を実行することができます。
具体例を交えて、複数条件を設定したOR関数の使い方についてみていきましょう。
3つ以上の条件を検索する
「A1」セルの値が10より大きい、「B1」セルの値が20未満である、または「C1」セルの値が30に等しい場合に「TRUE」を返すといった条件で検索します。
この場合のOR関数の数式は次の通りとなります。
=OR(A1>10, B1<20, C1=30)
別の関数と組み合わせて複数条件を検索する
OR関数は、単体で使用される場面は少なく、多くの場合は「IF関数」や「AND関数」などの他の関数と組み合わせて使用されます。
①「IF関数」と組み合わせる
「IF関数」を組み合わせることにより、先ほどの条件に加えて「TRUE」である場合は「条件を満たす」、「FALSE」である場合は「条件を満たさない」と表示させてみましょう。
この場合の数式は次の通りとなります。
=IF(OR(A1>10, B1<20, C1=30), “条件を満たす”, “条件を満たさない”)
②「AND関数」と組み合わせる
「A1」セルの値が10より大きい、かつ「B1」セルの値が20未満である、または「C1」セルの値が30に等しい場合に「TRUE」を返す。この条件を「AND関数」と組み合わせて検索してみましょう。
この場合の数式は次の通りとなります。
=OR(AND(A1>10, B1<20), C1=30)
「OR」関数の応用例
OR関数の応用例について解説します。
条件付き書式の設定
条件付き書式を使用して特定の条件に基づいてセルのフォーマットを変更することができます。OR関数を用いることで、複数の条件のいずれかが満たされた場合に書式を適用する設定が可能となります。
具体例を交えて手順を見ていきましょう。
①特定の範囲外にセルの値がある場合に強調表示する
例:「A1」セルの値が10以下、または50以上である場合にセルの背景色を赤に変更する
- データ範囲を選ぶ(例:A1)
- 「ホーム」タブより「条件付き書式」をクリックし、「新しいルール」を選ぶ
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選ぶ
- 数式欄に次の数式を入力する:「=OR(A1<=10, A1>=50)」
- 「書式」をクリックして、背景色を「赤」に設定する
- 「OK」をクリックし、設定を適用する
②複数列で条件を満たす際に強調表示する
例:列Aの値が50以下、または列Bの値が100以上の場合に行全体の背景色を赤に変更する
- データ範囲を選ぶ(例:)
- 「ホーム」タブより「条件付き書式」をクリックし、「新しいルール」を選ぶ
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選ぶ
- 数式欄に次の数式を入力する:「=OR($A1<=50, $B1>=100)」
- 「書式」をクリックして、文字色を「赤」に設定する
- 「OK」をクリックし、設定を適用する
③過去、または未来の日付の場合に強調表示する
例:今日の日付よりも過去、または未来の日付の場合にセルの背景色を赤に変更する
- データ範囲を選ぶ(例:D1)
- 「ホーム」タブより「条件付き書式」をクリックし、「新しいルール」を選ぶ
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選ぶ
- 数式欄に次の数式を入力する:「=OR(D1 < TODAY(), D1 > TODAY())」
- 「書式」をクリックして背景色を「赤」に設定する
- 「OK」をクリックし、設定を適用する
④特定の文字列が含まれている際に強調表示する
例:「エラー」または「不明」の文字列がセルに含まれている場合にセルの文字色を赤に変更する
- データ範囲を選ぶ(例:B1)
- 「ホーム」タブより「条件付き書式」をクリックし、「新しいルール」を選ぶ
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選ぶ
- 数式欄に次の数式を入力する:「=OR(ISNUMBER(SEARCH(“エラー”, B1)), ISNUMBER(SEARCH(“不明”, B1)))」
- 「書式」をクリックして、文字色を「赤」に設定する
- 「OK」をクリックし、設定を適用する
データのフィルタリング
OR関数を用いてデータのフィルタリングを行うことにより、複数条件に一致するデータだけを抽出することが可能です。
OR関数を用いたデータのフィルタリングは、「FILTER関数」と組み合わせることにより指定した条件に合うデータを動的にフィルタリングすることができます。
以下のデータを例にデータをフィルタリングする方法についてみていきましょう。
名前 | 年齢 | 部署 | スコア |
佐藤 健太 | 25 | 営業 | 80 |
鈴木 彩花 | 30 | 技術 | 90 |
高橋 直樹 | 22 | 営業 | 70 |
田中 美咲 | 28 | 管理 | 60 |
渡辺 翔太 | 35 | 技術 | 85 |
このデータより、次の条件を満たす行のフィルタリングを行います。
部署が「営業」である、またはスコアが「70以上」である
この場合の数式は以下の通りです。
=FILTER(A2:D6, (B2:B6=”営業”) + (D2:D6>=70))
- B2:B6=”営業”:部署が「営業」である
- D2:D6>=70:スコアが70以上である
- +:OR条件
これにより、今回の条件である部署が営業、またはスコアが70以上の社員のデータを表示することができます。
佐藤 健太 | 25 | 営業 | 80 |
鈴木 彩花 | 30 | 技術 | 90 |
高橋 直樹 | 22 | 営業 | 70 |
渡辺 翔太 | 35 | 技術 | 85 |
「OR」関数の注意点
OR関数を用いる上での注意点について紹介します。
論理値の扱い
OR関数を使用する際の注意点として、論理値の扱いに関するいくつかのポイントを理解しておくことが大切です。
①論理値と数値の混在
Excelでは、数値が論理値として解釈されることがあります。例えば、「0」は「FALSE」として、「0以外の数値」は「TRUE」として扱われます。このことを理解できていなければ数式が意図した結果を返してくれないことが起こり得ます。
②文字列の扱い
文字列の比較においては、文字列の代償関係を評価するため、文字列の空白やフォーマットに注意しなければ意図しない結果が返されてしまう場合があります。
③予期しない入力値の考慮
外部でデータの取り込みやユーザーの入力により、セルに予期しない値が入力されている場合があります。この影響で数式の結果が予期しないものとなってしまう場合もあるため、データクリーニングや入力データの検証を行いましょう。
空白セルの扱い
OR関数を活用する上で、空白セルの扱いについて理解しておくことは正確なデータ分析と結果を取得するために大切です。空白セルは特定の条件において異なる方法で評価されることがあるため、注意が必要となります。
OR関数における空白セルの扱いに関する注意点について解説します。
①空白セルの論理値評価
Excelでは、空白セルは基本的に「FALSE」として扱われます。そのため、関数の引数にセル参照で入力した場合に、参照先のセルが空白である場合は、OR関数は「FALSE」を返します。ただし、条件に「セルが空白である場合」が盛り込まれている場合は、必ずしも「FALSE」が返されるわけではないことに注意しましょう。
②空白セルの数値評価
空白セルは、数値的には「0」と見做される場合があります。これは、関数で数値を比較する際に影響する可能性があります。
例えば、次の例では空白セルは数値として評価されます。
=OR(A1=0, B1>15)
この際、「A1」セルが空白である場合は、空白セルは「0」と見做されるため、数式は「TRUE」と返します。
関連記事:エクセルINDIRECT関数で効率化!使い方と活用例解説
よくある質問
OR関数を用いる上でよくある質問について紹介します。
AND指定とOR指定の違いは?
AND・ORのどちらについても論理関数と呼ばれており、条件を評価し「TRUE」または「FALSE」を返す目的で用いられます。
この2つの違いについてみていきましょう。
基本的な動作 | 書式 | |
AND関数 | 引数で指定した条件の”すべて”が「TRUE」である場合に限り「TRUE」を返します。条件が”いずれか1つでも”「FALSE」である場合は「FALSE」が返されます。 | =AND(論理式1, [論理式2], …) |
OR関数 | 引数で指定した条件の”いずれか”が「TRUE」である場合は「TRUE」を返します。“すべて”の条件が「FALSE」である場合に限り「FALSE」が返されます。 | =OR(論理式1, [論理式2], …) |
AND関数は設定した複数の条件すべてが満たされるかどうかをチェックする際に用いられ、OR関数は設定した複数の条件のいずれかが満たされるかどうかをチェックする際に用いられます。
OR関数はTRUE以外でも使えますか?
通常、OR関数は「TRUE(またはFALSE)」を返します。しかし、他の関数(例:IF関数)と組み合わせることにより他の値を表示させることも可能です。具体的な方法について、例を交えて解説します。
例えば、「A1」セル10より大きい、またはB1が20未満の場合に「条件を満たす」と表示し、それ以外の場合に「条件を満たさない」と表示するとします。この場合に結果を表示させるセルに入力する数式は次の通りです。
=IF(OR(A1>10, B1<20), “条件を満たす”, “条件を満たさない”)
OR条件のtrueとfalseの違いは何ですか?
OR条件における「TRUE」と「FALSE」の違いを理解するために、OR関数の基本的な概要について説明します。
OR関数とは、設定した複数の条件の内、1つでもその条件を満たすものがあるかどうかを判断するために用いられる関数です。引数で指定したいずれかの条件に当てはまる場合には「TRUE」が返され、すべての条件に当てはまらない場合は「FALSE」が返されます。
OR関数における「TRUE」と「FALSE」の違いは一言で言うと次の通りです。
- TRUE:設定したいずれかの条件に当てはまっている
- FALSE:設定したすべての条件に当てはまらない
まとめ
「OR」関数は、Excelでのデータ分析を強化するための重要なツールです。複数条件の評価、条件付き書式の設定、データフィルタリングなど、さまざまな場面で活用できます。論理値や空白セルの扱いに注意しながら、AND関数との違いや応用例を理解することで、より効果的にデータを管理が行えます。
本記事で紹介したポイントを活用して、Excelでのデータ分析を一段と向上させましょう。
Excel OR関数に関する重要用語
用語 | 説明 |
OR関数 | =OR(論理式1, [論理式2], …)設定した複数の条件の内、1つでもその条件を満たすものがあるかどうかを判断するために用いられる関数 |
AND関数 | =AND(論理式1, [論理式2], …)設定した複数の条件がすべて満たされているかどうかを判断するために用いられる関数 |
FILTER関数 | =FILTER(配列,含む,[空の場合])指定した配列やセルの範囲から、設定した条件を満たすデータを抽出する際に用いられる関数 |