フリーランスや個人事業主の手取りや年収が会社員と比較してどの程度になるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。

納める税金の金額や保険料は、フリーランスや個人事業主では会社員と違ってきます。また事業でかかった経費も自身で支払う必要があるため、売上がそのまま手取りになるわけではありません。フリーランスや個人事業主は、売上から経費や税金、保険料を差し引いた金額が手取りです。

この記事ではフリーランスや個人事業主の手取りの月額金額、税金の計算方法、支払う保険料、手取りを上げる方法を紹介します。

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フリーランスの手取り金額

フリーランスや個人事業主は、事業で得た「売上」から「経費」を引いた金額が「所得」となります。以下が簡単な計算方法です。

■手取り金額の計算方法

売上 - 経費 = 所得

フリーランスの手取り金額は、所得によって異なります。下表は手取り金額の概算です。フリーランスの概算条件としては、開業届を出しておらず白色申告で行うものとしています。

概算条件

  • 年齢:20歳~39歳
  • 配偶者:あり
  • 配偶者の収入:103万円以下
  • 扶養親族:1人(16歳以上)
  • 確定申告:白色申告
  • 国民年金:支払いあり
所得手取り概算(年間)所得に対する手取りの割合
250万円190万円76%
300万円228万円76%
400万円304万円76%
500万円376万円75%
600万円442万円74%
700万円505万円72%
800万円569万円71%
900万円633万円70%
1000万円693万円69%

出典:税金・社会保障教育「個人事業主の税金や手取りをパッと計算シミュレーション

個人事業主の手取り金額

個人事業主の場合も手取り金額は、所得によって異なります。手取り金額の概算は下表のような結果です。個人事業主の概算条件としては、開業届を出しており青色申告するものとしています。

概算条件

  • 年齢:20歳~39歳
  • 配偶者:あり
  • 配偶者の収入:103万円以下
  • 扶養親族:1人(16歳以上)
  • 確定申告:青色申告
  • 国民年金:支払いあり
所得手取り概算(年間)所得に対する手取りの割合
250万円205万円82%
300万円243万円81%
400万円320万円80%
500万円394万円79%
600万円466万円78%
700万円529万円76%
800万円592万円74%
900万円655万円73%
1000万円718万円72%

出典:税金・社会保障教育「個人事業主の税金や手取りをパッと計算シミュレーション

会社員の手取り金額

会社員の場合、会社から支給される「総支給金額」から住民税や所得税、社会保険料などの「控除」を差し引いた金額が「手取り金額」となります。一般的には、総支給金額の「75%〜85%」が手取り金額です。

出典:doda(デューダ)「月給・年収の手取り計算の方法

下表に会社員の手取り金額の概算をまとめています。

所得手取り概算(年間)所得に対する手取りの割合
250万円188~213万円75〜85%
300万円225~255万円75〜85%
400万円300~340万円75〜85%
500万円375~425万円75〜85%
600万円450~510万円75〜85%
700万円525~595万円75〜85%
800万円600~680万円75〜85%
900万円675~765万円75〜85%
1000万円750~850万円75〜85%

フリーランス・個人事業主の手取り・税金の計算方法?

フリーランス 手取り 早見表 月収

会社員の場合は、総支給金額から社会保険料や税金が差し引かれて振り込まれます。その金額が手取りの給与です。

一方フリーランスや個人事業主は、経費や税金、保険料を自身で計算し確定申告を行います。事業売上からそれらを差し引いた金額が手取りです。

手取り計算

フリーランスや個人事業主の手取り金額は、事業で得た売上から経費や税金、保険料を引いたものです。次の式で計算ができます。

■フリーランス・個人事業主の手取り計算

売上-(経費 - 税金 - 社会保険料) = 手取り金額

売上以外にも、経費、税金、社会保険料の金額を知らないと、手取りの計算ができません。税金はフリーランスや個人事業主の場合4種類あり「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」です。これらは「課税所得」を元に計算します。社会保険料は3種類あり「国民年金保険料」「国民健康保険料」「介護保険料」です。

課税所得の計算

課税所得とは、所得税を計算する際に対象とする「所得」のことです。課税所得は次の式で計算ができます。

■課税所得の計算方法

売上 - 経費 - 所得控除 = 課税所得

経費は、事業を営む上で使用した費用のことです。例えば以下があります。

  • 従業員の福利厚生費
  • カンバンやチラシなどの広告宣伝費
  • 事務用品などの消耗品費
  • 顧客との打ち合わせなどで移動した際の旅費交通費
  • 会議や会食のための交際費
  • 雇用する際の人件費
  • 事務所にかかる家賃や水道光熱費
  • 携帯電話などの通信費

所得控除とは、所得から差し引くことのできる金額です。15種類の控除があり、自身に当てはまるものを適用することで課税所得を減らすことができます。

  • 基礎控除
  • 扶養控除
  • 配偶者特別控除
  • 配偶者控除
  • 勤労学生控除
  • ひとり親控除
  • 寡婦控除
  • 障害者控除
  • 寄付金控除
  • 地震保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 社会保険料控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除

出典:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし

また確定申告を青色申告した場合は、青色申告特別控除を適用することが可能です。

出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除

所得税の計算

所得税とは、1年間の課税所得額で計算される税金のことです。1年間とは1月1日から12月31日の期間で、所得がある人は全員所得税を納める必要があります。

■所得税の計算方法

  • 課税所得 × 税率 - 控除額 = 所得税

税率と控除額は、課税所得によって変化します。

課税所得税率控除額
1,000円~195万円未満5%0円
195万円~330万円未満10%97,500円
330万円~695万円未満20%427,500円
695万円~900万円未満23%636,000円
900万円~1800万円未満33%1,536,000円
1800万円~4000万円未満40%2,796,000円
4000万円以上45%4,796,000円

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率

2013年から2037年までは、所得税額の2.1%を「復興特別所得税」として所得税に加算して納める必要があります。

出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税を計算してみよう

課税所得が600万円の場合、納める所得税は次の通りです。

  • 600万円 × 20%(税率) - 427,500(控除額)= 772,500円(基準所得税額)
  • 772,500円 × 2.1% = 16,222円(復興特別所得税額)
  • 772,500円 + 16,222円 = 788,722円(納める所得税)

住民税の計算

住民税とは、住んでいる市区町村や都道府県に納める税金です。公共サービスや地域の費用に使われています。フリーランスや個人事業主の場合、1年分を一括で納めるか4回に分けて納める方法です。住民税は「所得割」と「均等割」を足した金額となり、計算式は次の通りです。

■住民税の計算方法

前年の課税所得 × 10%(所得割) + 5,000円(均等割)

所得割は、前年の課税所得によって決まります。所得が多いほど、金額も多くなる仕組みです。均等割は、一律5,000円となっています。均等割には東日本大震災を教訓とした自治体の防災対策費に充てるため、1,000円が加算されている状態です。2024年以降は4,000円となります。

個人事業税

個人事業税とは、都道府県に支払う地方税です。個人事業主は事業を行う上で、さまざまな行政サービスを利用します。それらを利用するための費用を負担するために納める税金です。次の計算式となります。

  • 前年の課税所得 × 業種とごと税率

業種ごとの税率とは、地方税法第72条に定められている70種類の業種それぞれに決められた税率を指しています。

区分税率主な事業の種類
第1種事業5%物品販売業、料理店業、保険業、不動産貸付業、印刷業、製造業、電気通信業など。
第2種事業4%畜産業、水産業、薪炭製造業。
第3種事業5%医業、歯科医業、薬剤師業、公認会計士業、弁護士業、理容業、美容業、コンサルタント業、クリーニング業など。
3%はり、きゅう、指圧、あんま、マッサージなど。

出典:東京都主税局「個人事業税・税金の種類

消費税

フリーランスや個人事業主は条件を満たした場合、売上時に発生した消費税を納める必要があります。消費税を納める条件は、次の2つです。どちらか1つでも当てはまる場合は、消費税の納税義務が発生します。一方どちらにも当てはまらない場合は、消費税の納税義務は発生しません。

  • 前々年の売上が「1,000万円」を超える場合
  • 前年の1月1日から6月30日の間の売上が「1,000万円」を超える場合

例えばその年の1年間の売上が1,000万円を超えた場合、2年後から消費税の納税義務が発生します。またはその年の1月1日から6月30日の売上が1,000万円を超えた場合、次の年から納税義務が発生するということです。

消費税の計算方法には2つの種類があり、売上高によって選択条件が決められています。

消費税の計算方式選択条件計算式
一般課税方式売上高に関係なく選択できる(売上 × 消費税率(10%))-(経費×消費税率(10%))
簡易課税方式売上高が5,000万円以下の場合に選択できる(売上 × 消費税率(10%))-(売上×消費税率(10%)×みなし仕入率)

簡易課税方式の計算式にある「みなし仕入率」とは、事業区分によって割合が決められています。次の表のとおりです。

事業区分みなし仕入率主な業種
第1種事業90%卸売業
第2種事業80%小売業、漁業、林業、農業(飲食料の譲渡に関わる事業)など
第3種事業70%漁業・林業・農業(飲食料の譲渡に関わらない事業)、製造業、建設業、電気業など。
第4種事業60%その他の業種、飲食店業など。
第5種事業50%サービス業、金融・保険業、運輸通信など。
第6種事業40%不動産業

出典:国税庁「No.6509 簡易課税制度の事業区分

一般課税方式の例として売上600万円、経費200万円の場合、消費税は次のようになります。

  • (600万円×10%)-(200万円×10%)= 40万円(消費税)

簡易課税方式の例として、サービス業の事業者が売上600万円だった場合、消費税は次のようになります。

  • (600万円×10%)-(600万円×10%×50%(みなし仕入率))= 30万円(消費税)

上記の例では一般課税方式で計算した消費税は「40万円」、簡易課税方式で計算した消費税は「30万円」のため、簡易課税方式の方が節税効果が高いと言えるでしょう。

しかし経費が400万円だった場合は、一般課税方式の消費税は「20万円」となるため、一般課税方式の方が節税効果が高くなります。

  • (600万円×10%)-(400万円×10%)= 20万円(消費税)

このように、経費の大きさによって節税効果が高い方式が分かれます。

売上高が5,000万円以下の事業者は一般課税方式と簡易課税方式を選択できますが、簡易課税方式を選択すると2年間は変更ができません。今後発生する経費を考慮して、計算方式を選択するのが良いでしょう。

フリーランス・個人事業主が支払う保険料は?

フリーランス 手取り 早見表 月収

フリーランスや個人事業主が支払う社会保険料には、3種類があります。「国民年金保険料」「国民健康保険料」「介護保険料」です。ただし介護保険料に関しては、条件に該当する場合のみ、支払いの義務が発生します。

国民健康保険料

国民健康保険とはフリーランスや個人事業主、自営業者、年金受給者、無職など、医療保険制度に加入していない人向けの制度です。扶養家族がいる場合、人数分だけ国民健康保険に入る必要があります。国民健康保険は都道府県が主体となり、市区町村が運営を行う体制です。所得や住んでいる地域、加入人数によって金額は変わってきます。

国民健康保険料の内訳は、「医療分」「後期高齢者支援金分」です。計算は各自治体によって異なりますが、単身者の年収別全国平均は下表のとおりです。

年収国民健康保険料(月額)国民健康保険料(年額)
200万円12,046円144,552円
300万円17,618円211,416円
400万円23,513円282,156円
500万円29,887円358,644円
600万円36,260円435,120円
700万円42,952円515,424円
800万円50,122円601,464円
900万円57,292円684,504円
1,000万円64,266円771,192円

出典:MANEMO「国民健康保険料の月額平均はいくら?

国民年金保険料

国民年金とは、日本に住んでいる20歳〜60歳未満の人は全員加入する必要のある制度です。フリーランスや個人事業主、失業者、学生は、国民年金の第1号被保険者に区分され、国民年金の保険料を自身で納める必要があります。

国民年金の保険料は、全国一律です。毎年金額が変動し、令和5年度では月当たり「16,520円」となっています。まとめて前納すると割引が適用される仕組みです。

下表は納付の種類と納付額を示しています。( )内は前納した場合の割引額です。

納付の種類毎月納付当月未振替6カ月分前納1年分前納2年分前納
納付書払いクレジットカード払い16,520円(0円)98,310円(810円)194,720円(3,520円)387,170円(14,830円)
口座振替16,520円(0円)16,470円(50円)97,990円(1,130円)194,090円(4,150円)385,900円(16,100円)

出典:日本年金機構「国民年金保険料の前納

介護保険料

介護保険制度は、住んでいる市区町村が運営しています。介護保険料を給付し、介護が必要と認定された人がいつでも介護サービスを受けられるようにする制度です。介護する親族の負担軽減や、要介護者の自立支援を目的としています。そのため40歳から介護保険料を納めることが義務付けられているのです。

介護保険では、保険の給付条件や保険料の納付方法などにより、次の2つに区分されています。

区分年齢支払い方法
第1号被保険者40歳~64歳医療保険の保険料に上乗せする形で支払う
第2号被保険者65歳~年金からからの天引きで支払う

出典:厚生労働省「介護保険制度について

介護保険料の全国平均は、月当たり「6,014円」となっています。

出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等

インボイス制度で手取りは大きく変わる?

消費税の免税事業者の場合、インボイス制度によって手取りが変わってくる可能性があります。インボイスが発行できる適格請求書発行業者に登録する場合、消費税の課税事業者に変更する必要があるためです。

関連記事:フリーランスが対応すべきインボイス制度とは? 対応方法や影響を解説

インボイス制度とは?

インボイスとは適格請求書のことで、商品やサービスを仕入れる際に仕入れ側が発行する請求書になります。インボイス制度とは適格請求書等保存方式と呼ばれ、仕入れ先が発行したインボイスを保存しておくことが義務付けられる制度です。2023年10月1日より、新たに導入されることが決まっています。

今までは、商品やサービスの仕入れ先が消費税の免税事業者でも課税事業者でも関係なく、仕入れ時に支払った消費税を控除対象にすることができました。しかしインボイス制度の導入後は、仕入れ先からのインボイスがないと仕入れ時に支払った消費税を控除対象にすることができなくなります。

インボイスを発行できる仕入れ先は、適格請求書発行事業者に登録した事業者のみです。適格請求書発行事業者に登録できるのは消費税の課税事業者であることが前提となっているため、免税事業者は登録することができません。そのためインボイス制度の導入後は、企業が免税事業者から商品やサービスを仕入れた場合、その際に支払った消費税を免税対象にすることができなくなってしまいます。

免税事業者となっているフリーランスや個人事業主は、取引を打ち切られる可能性もあるため、課税事業者に変更し適格請求書発行事業者に登録することを検討する必要があるでしょう。

ただし課税事業者に変更した場合、商品やサービスを提供した際に受け取った消費税を納税する義務が発生します。

インボイス制度後の手取り早見表

インボイスが発行できる適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)に登録するため、免税事業者から課税事業者に変更した場合、手取りがどのように変わるのでしょうか。この場合、2023年10月1日から2026年9月30日までは「2割特例」措置が適用されます。2割特例では、納税する消費税額は次の計算式です。

  • 売上 × 消費税率(10%) × 2割(20%) = 納税額

出典:国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)

フリーランスの場合

「2割特例」を考慮した場合、フリーランスの手取りの概算は次のようになります。開業届を出しておらず、白色申告することが条件です。

概算条件

  • 年齢:20歳~39歳
  • 配偶者:あり
  • 配偶者の収入:103万円以下
  • 扶養親族:1人(16歳以上)
  • 確定申告:白色申告
  • 国民年金:支払いあり
所得手取り概算(年間)所得に対する手取りの割合
250万円186万円74%
300万円223万円74%
400万円297万円74%
500万円368万円74%
600万円433万円72%
700万円494万円71%
800万円557万円70%
900万円620万円69%
1000万円679万円68%

フリーランスの手取り計算シミュレーションで出た金額に「2割特例」の消費税を引いた値で算出しています。

出典:税金・社会保障教育「個人事業主の税金や手取りをパッと計算シミュレーション

個人事業主の場合

「2割特例」を考慮した場合、個人事業主の手取りの概算は次のようになります。開業届を出しており青色申告することが条件です。

概算条件

  • 年齢:20歳~39歳
  • 配偶者:あり
  • 配偶者の収入:103万円以下
  • 扶養親族:1人(16歳以上)
  • 確定申告:青色申告
  • 国民年金:支払いあり
所得手取り概算(年間)所得に対する手取りの割合
250万円200万円80%
300万円238万円79%
400万円313万円78%
500万円386万円77%
600万円456万円76%
700万円518万円74%
800万円580万円73%
900万円641万円71%
1000万円703万円70%

個人事業主の手取り計算シミュレーションで出た金額に「2割特例」の消費税を引いた値で算出しています。

出典:税金・社会保障教育「個人事業主の税金や手取りをパッと計算シミュレーション

フリーランス・個人事業主の手取りを上げる方法

フリーランス 手取り 早見表 月収

フリーランスや個人事業主が手取りを上げる方法としては、支出を減らすか収入を増やすかの方法があります。すぐにできる方法としては、正しく経費計上したり、受けられる控除を確認したりすることでしょう。

経費計上をする

事業を行う上でかかった費用は経費計上することができます。経費計上することで課税所得額を減らすことができるため、納める税金を少なくすることが可能です。納める税金が少なくなれば、手元に残る金額が増えることになるでしょう。

経費として費用を計上する場合、設備費や飲食代、消耗品代など、細かく計上していくことが大切です。ただし経費計上できるものは、事業と関係のある費用のみとなります。税務署から指摘された場合でも、事業と関係のあることが説明できるようにしておくことが重要です。

項目説明
仕入れ費商品などを仕入れた際の費用。
慶弔金取引先の冠婚葬祭での出費費用。
飲食代事業と関係ある場合の食事代。
通信費電話やインターネット利用にかかる費用。
水道光熱費事務所で使用するガス、電機、水道などの料金。
旅費交通費出張や営業、打ち合わせ時に移動した場合の費用。
広告宣伝費新聞広告、チラシ、求人などの費用。
消耗品費事務作業で使用する道具、10万円未満の物品。
事業に関係する会費国民健康保険組合の加入や業界の団体の会費など。

ただし費用計上する金額を増やしたいからと言って、無駄に購入したりすることは返って手取りを減らすことになってしまうので注意が必要です。

控除を受ける

控除は所得から差し引くことができるため、控除額が大きくなれば納める税金を少なくすることが可能です。申請できる控除は使用するようにしましょう。所得控除には、基礎控除や扶養控除など、15種類の控除があります。それぞれ該当するかどうか確認することが大切です。

所得控除説明
基礎控除すべての人に適用される控除。
社会保険料控除本人と同一生計の親族の社会保険料。
小規模企業共済等掛金控除支払いをした掛金が控除対象。
生命保険料控除生命保険、個人年金、介護医療保険などの保険料の一部。
地震保険料控除地震等損害分の保険料の一部。
寡婦控除離婚後の扶養親族がいる場合や、死別した場合に適用される。
ひとり親控除所得が500万円以下でひとり親として子どもと同じ生計を立てている。
勤労学生控除勤労学生の場合。
障害者控除本人や同一生計の親族が障害者の場合。
配偶者控除同一生計の配偶者がいて配偶者の合計所得が48万円以下の場合。
配偶者特別控除同一生計の配偶者がいて配偶者の合計所得が48万円を超えて133万以下の場合。
扶養控除扶養親族や老人扶養親族、特定扶養親族がいる場合。
雑損控除本人や同一生計の親族が、横領、盗難、災害によって損害を受けた場合。
医療費控除本人や同一生計の親族の医療費が一定額以上になった場合。
寄付金控除国や都道府県、市町村、独立行政法人、政治献金などの寄付を行った場合。

青色申告書を提出する

確定申告を青色申告することで、特別控除を受けることが可能です。最大65万円の控除となります。青色申告で65万円の控除を受けるには、開業届や青色申告承認申請書の提出、帳簿の記載は複式簿記など各種条件があります。下表は白色申告と青色申告の違いを示した表です。

項目白色申告青色申告(10万円控除)青色申告(最大65万円控除)
届出必要なし開業届青色申告承認申請書開業届青色申告承認申請書
記帳方法単式簿記単式簿記複式簿記
提出書類確定申告書B確定申告書B青色申告書決算書確定申告書B青色申告書決算書貸借対照表
節税効果なし10万円控除最大65万円控除

出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除

仕事の単価を上げる

現在携わっている業務の単価を上げることで、手取りを増やすことが可能です。ただし単価交渉は、状況やタイミングなどが重要となります。クライアントとの信頼関係が構築できていないと、単価交渉は成功しないと言えるでしょう。クライアントとの信頼構築を築くためには次のことが重要です。

  • 同じミスをしない
  • 円滑なコミュニケーション
  • 不足や不備がない成果物を出す
  • 納期を守る

また単価交渉のタイミングは、業務がひと段落ついた時や業務の節目が良いでしょう。タイミングが悪いと印象が悪くなったり、信頼低下につながったりしてしまいます。信頼関係を構築した上で適切なタイミングで行うのが成功するポイントです。

スキルを身に付ける

スキルを高めることで高単価の案件を獲得し、手取りを増やすことが可能です。スキルを高めるには、いくつかの方法が考えられます。

  • 現在保有しているスキルを深掘りする
  • 現在保有していない新しい分野のスキルを身につける

業界の動向やクライアントからの要望を見極めて、どちらの方向のスキルを身につけていくのかを決める必要があります。またスキルを身につけるには時間がかかることが考えられるでしょう。独学が難しい場合は、スクールなどに入って身につける方法が最短となります。

スキルを身につけることで専門性が高まれば、収入や手取りを増やすことが可能です。

会社員と手取りの違いが生まれる理由は?

フリーランスや個人事業主と会社員では手取りに違いが出てきます。同じ年収であっても控除額や年金、健康保険料が異なるためです。

参考までに年収が400万円の個人事業主と会社員の手取りを試算すると、個人事業主の「309万円」に対し会社員は「315万円」となりました。年収400万円の場合は、会社員の方が6万円多い結果です。

出典:マネーフォワード クラウド「年収400万円の個人事業主と会社員は手取りが同じ?

年収800万円以上だと法人化した方が良い理由

フリーランスや個人事業主が年収800万円以上となった場合、所得税率が法人よりも大きくなります。そのため法人よりも多くの所得税を納めることが必要です。所得税の計算例は次の通りです。

  • 個人事業主:(800万円 × 所得税率23%)-控除額63万6,000円 = 120万4,000円
  • 法人:800万円 × 法人税率15% = 120万円

ただし、適用できる控除などを考慮してシミュレーションすることが必要となります。

よくある質問

ここでは、フリーランスや個人事業主に関してよくある質問をまとめています。

フリーランス・個人事業主に取って一番メリットのある月収・年収はいくらですか?

フリーランスや個人事業主の課税所得が800万円を超えると、所得税が法人よりも高くなります。そのため、800万円の一段階下の税率となる「695万円以下」が一番メリットがあると言えるでしょう。所得税率の一覧表は以下の通りです。

課税所得税率控除額
1,000円~195万円未満5%0円
195万円~330万円未満10%97,500円
330万円~695万円未満20%427,500円
695万円~900万円未満23%636,000円
900万円~1800万円未満33%1,536,000円

白色申告・青色申告の場合ではどのくらい手取りが変わりますか?

確定申告時、青色申告を行うことで特別控除が適用され優遇を受けることが可能です。実際に白色申告と青色申告では、どれくらい手取りに差が出てくるのか以下に試算しています。所得額を300万円と仮定した計算です。

項目白色申告青色申告
年収(所得)300万円300万円
控除額48万円(基礎控除)65万円(青色申告特別控除)48万円(基礎控除)
課税所得202万円143万円
年金保険料20万円20万円
健康保険料30万円24万円
所得税10万円7万円
住民税21万円15万円
個人事業税0.5万円0.5万円
手取り金額約 218.5万円約 233.5万円

手取り金額を確認すると、青色申告の方が約15万円高い結果です。

源泉徴収の有無は手取りに影響しますか?

源泉徴収とは、報酬や給与を支払う側が所得税分を差し引いて支払うことです。次のような場合、フリーランスや個人事業主が源泉徴収します。

  • 広告宣伝のための賞金支払い
  • コンパニオンへの支払い
  • 芸能プロダクションへの支払い
  • モデル、営業外交員、プロスポーツ選手に支払う報酬
  • 社会保険診療報酬支払基金への診療報酬
  • 公認会計士、弁護士などの資格を持つ人への報酬
  • コンサルタント、翻訳、デザイン、講演、原稿などの支払い

この場合は報酬の中から所得税分を徴収しているので、フリーランスや個人事業主の手取りに影響はしません。

まとめ

今回はフリーランスや個人事業主の手取り金額、税金の計算方法、支払う保険料、手取りを上げる方法などを紹介しました。手取りを上げるには、売上を増やす方法と支出を減らす方法があります。フリーランスや個人事業主は、自身で経費を計上したり税金を計算したり、控除を確認したりすることが必要です。これらを漏れなく正しく計上することで節税することができるため、支出を減らすことが可能となるでしょう。

一方売上を増やす方法としては、仕事の単価を上げる交渉を行ったり、スキルを身に着けて高度な業務を受注したりする方法があります。売上を増やす方法は時間がかかるものです。

まずは支出を減らすことを目的に、可能な節税対策があるかどうかを確認するのが手取りを増やす良い方法と言えるでしょう。

フリーランス手取り早見表に関する重要用語

ここでは重要用語について説明します。

用語説明
売上事業で提供した商品やサービスで稼いだ売上の総額。
経費事業を行う上で必要な費用。
所得売上から経費を差し引いた金額。
確定申告1年間の売上から経費などを差し引いて所得を計算し、納める税金を報告すること。青色申告と白色申告の2つの種類がある。
青色申告確定申告の種類の一つ。帳簿は複式簿記で記載する必要があり、特別控除の優遇を受けられる。
白色申告確定申告の種類の一つ。帳簿は単式簿記での記載で問題ない。特別控除の優遇は受けられない。
手取り金額売上から「経費」「税金」「社会保険料」を差し引いた金額。
課税所得所得税の計算時に対象とする所得のこと。売上から「経費」「所得控除」を差し引いた金額。
所得税課税所得に対して税率をかけた金額。課税所得が増えるにつれて税率も上がる。
所得控除所得から差し引くことのできる金額。基礎控除や扶養控除、医療費控除など15種類ある。
住民税住んでいる地域に納める税金。地域の公共サービスのために使われる。
個人事業税都道府県に納める税金。行政サービスのために使われる。
消費税商品やサービスの提供など、取引した際に発生する税金。
国民健康保険個人事業主、自営業者、年金受給者、無職など、医療保険制度に加入していない人向けの制度。
国民年金保険日本に住んでいる20歳〜60歳未満の人が全員加入し、老後の生活を保証する制度。
介護保険介護が必要と認定された人がいつでも介護サービスを受けられるようにする制度。
インボイス制度仕入れ先が発行したインボイスを保存しておくことが義務付けられる制度。