フリーランスは会社員と異なり、確定申告や年金、保険など様々な手続きを行う必要があります。また納めるべき税金や保険を理解し節税対策を把握しておかなければ、税金を払い過ぎてしまうことも考えられるでしょう。

納めるべき税金を期日までに支払っていないと、金額や期限に応じたペナルティが課されてしまい、延滞税や無申告加算税などの追加納税を納める必要がでてきます。そのため、多くのフリーランスが節税可能な部分があれば、払う税金を少なくしたいと考えるのではないでしょうか。

この記事では、フリーランスとして知っておくべき税金の知識、節税方法、2023年10月に施行されるインボイス制度について紹介します。

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フリーランスとは?

フリーランス 税金対策

フリーランスとは、働き方の形態を指している言葉です。会社員のように企業に所属しているのではなく、個人として業務を請け負います。フリーランスは通訳や翻訳、Webデザイン、ライティング、ソフトウェア開発など個人の保有している技術やスキルを使って仕事を行う業種が多いです。

フリーランスは企業とは雇用関係がないため、労働基準法などの法律は適用外になります。勤務場所や勤務時間などは自由となりますが、残業時間や最低賃金などのルールは設けられていません。さらに確定申告などの税金や保険の手続きは、自身で実施する必要があります。

フリーランスの人口

フリーランスの人口は、2020年5月に内閣官房日本経済再生総合事務局が発表した報告によると、国内で462万人の試算となります。調査結果の詳細は下表のとおりです。

項目説明
調査機関内閣官房日本経済再生総合事務局
フリーランス人口の試算462万人
調査期間2020年2月10日~3月6日
フリーランスの条件個人で事業を営んでいる従業員の雇用がない実店舗がない農林漁業の従事者以外※法人の経営者も含んでいます

出典:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査(Page25)」

またフリーランスの年齢構成としては、ミドル層やシニア層が全体の約7割を占めています。下表はフリーランス全体の中の年齢構成です。40歳以降が大半となっていることがわかります。

年齢割合
~29歳11%
30歳以上17%
40歳以上22%
50歳以上20%
60歳以上30%

出典:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査(Page2)」

この状況から、会社員としてスキルや技術を身に着けた後にフリーランスとして独立する場合が多いと言えるでしょう。実際にフリーランスになることを選択した理由としては、「自分自身のスタイルで仕事をしたいため」というのが全体の約6割を占めています。一定の技術やスキルを身に着けてから、自身の仕事のスタイルを実現するという状況です。

下表は、フリーランスを選択した理由をまとめています。

項目割合
自分自身のスタイルで仕事をしたいため57.8%
働く場所や時間を自由にしたいため39.7%
収入を増やすため31.7%
自分の資格や能力を活かすため27.3%
やってみたいことがあるため13.5%
ワークライフバランスを充実させたいため11.9%

出典:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査(Page3)」

個人事業主とフリーランスの違い

フリーランスは、企業に属さずに個人で業務を請け負う働き方のことです。一方で個人事業主とは、税務上の区分を指しています。法人を設立せず、税務署に開業届を出して個人で仕事を請け負う形です。個人事業主とフリーランスの違いは、下表になります。

項目個人事業主フリーランス
税務署への届出開業届出を出している開業届出を出していない場合が多い
確定申告青色申告白色申告
所得税控除最大65万円の控除控除なし

個人で仕事を請け負う場合、開業届を提出するのが良いでしょう。開業届を提出することで、税務上のさまざま恩恵を受けることが可能です。まずは、フリーランスや個人事業主が納めるべき税金について理解しておく必要があります。

フリーランス・個人事業主が納めるべき税金

フリーランス 税金対策

フリーランスや個人事業主など、個人で業務を請け負っている場合、納めるべき税金は4種類あります。ただし消費税と個人事業税は、条件に当てはまらない人は納める必要はありません。ここでは各税金について紹介するので、理解していきましょう。

消費税

消費税とは、サービスや商品を購入したり消費したりした場合に発生する税金です。売り上げと同時に受け取った消費税から、経費の際に払った消費税を引いた分を納めます。ただし個人事業主は、消費税の免税制度が利用可能です。前々年の課税対象の売上が1000万円以下の場合、消費税が免除されます。

しかし前々年の課税対象の売り上げが1000万円以下の場合でも、特定期間である「1月1日〜6月30日」の課税売上が1000万円を超えた場合は納税が必要です。

所得税

所得税とは、1年間に得た事業の所得に対して発生する税金です。所得が多いほど、納める税金の割合が上がる「累進課税制度」が適用されています。フリーランスや個人事業主にとっては、一番大きな負担になる税金と言えるでしょう。

住民税

住民税とは、その地域に住んでいる人たちが地域に関する費用を負担するための税金です。例えば行政サービスの維持などが挙げられます。フリーランスや個人事業主の場合、法人住民税(都道府県民税、市町村税)という種類です。確定申告の後、事業所に届く納付書にしたがって納税を行います。

納税方法には、2つの選択が可能です。1つは「6月」「8月」「10月」「1月」の年4回払いで、もう1つは「6月」に一括払いする方法になります。毎年6月に住民税の納付書が市町村から届くので、金融機関などで支払を行う形です。

個人事業税

個人事業税とは、都道府県に対して個人事業主が納める税金です。個人事業主は事業を行う際、都道府県のさまざまな行政サービスを利用します。そのため行政サービスに必要な費用を税金として納めることです。納税方法は「8月」「12月」の年2回に分けて行います。ただし所得が290万円以下の場合や、課税対象にならない職種の場合は、納税する必要はありません。

フリーランス・個人事業主の節税方法

フリーランス 税金対策

税金に関して正しい知識を持っていれば、節税することが可能です。節税を考えるときに重要となるのが、「控除」と「経費」になります。所得からこれらを引くことで節税可能となるためです。

控除

控除とは、所得から差し引いて計算することを意味する言葉です。控除には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、医療費控除など、さまざまな種類があり全部で14種類になります。控除を適用するのとしないのとでは、納税額が大きく変わるでしょう。そのため適用できる控除は確認しておく必要があります。

控除の種類説明
基礎控除誰でも受けられる控除で、控除金額は38万円。
配偶者控除配偶者の収入が103万円以下の場合に受けられる控除。収入によって金額が変わる。
配偶者特別控除配偶者の収入が103万円以上、141万円未満の場合に受けられる控除。収入によって金額が変わる。
扶養控除扶養家族がいる場合に受けられる控除。
雑損控除盗難や災害など、資産に被害があった場合に受けられる控除。
医療費控除医療費の支払いが1年間で10万円以上または、所得の5%以上の場合に受けられる控除。
社会保険料控除年金や健康保険など、社会保険料を1年間払った際に受けられる控除。全額が対象となる。
小規模企業共済等掛金控除個人型確定拠出年金や小規模企業共済などに入っている場合に受けられる控除。全額が対象となる。
生命保険控除民間の個人年金や生命保険に入っている場合に受けられる控除。契約内容によって金額が変わる。
地震保険料控除津波や地震などで発生した損壊、火災に対する保険に入っている場合に受けられる控除。契約内容によって金額が変わる。
寄付金控除認定NPOや地方公共団体、国などに寄付した場合に受けられる控除。
障害者控除扶養家族や自身が障害者の場合に受けられる控除。
寡婦(夫)控除妻や夫と離婚や死別し、親族を扶養している場合に受けられる控除。
勤労学生控除専門学校や大学、高校、中学に通う学生が受けられる控除。
国民年金基金月6万8000円まで掛け金を出すことができ、全額が所得控除対象。

関連記事:フリーランスの年金事情は? 免除される方法や手順を解説

経費

経費とは、事業を実施していく上で必要なコストを指します。例えば商品の仕入れや事務用の消耗品、広告宣伝費、地代家賃、光熱費、アルバイトの人件費などです。このように経費は、さまざまな種類があるため「勘定科目」という分類項目が決められています。事業を実施していく上で発生した経費は、勘定科目ごとに分類しておく必要があります。主な勘定科目は次の通りです。

勘定科目説明
消耗品費、事務用品費事務用の文房具、10万以下のソフトウェアなど。
新聞図書費事業と関連した新聞、雑誌、書籍など。
通信費インターネット、携帯電話、郵便、クラウドタイプの会計ソフトなど。
会議費カフェで打ち合わせした場合の費用など。
雑費事務所の清掃費用、ごみ処分代、銀行手数料など。
交通費業務で移動した際の交通費など。
広告宣伝費仕事に関する広告の掲載費など。
外注費人材派遣会社にかかる費用など。
交際費仕事の取引先との食事代など。

青色申告

青色申告とは、確定申告の方法の一つです。確定申告には「青色申告」「白色申告」の2種類があり、それぞれ帳簿の記載方法や節税額が異なります。青色申告を選択することで高い節税効果が可能です。

青色申告をするためには、事前に届出を行い帳簿は複式簿記で記載する必要があります。さらに、損益計算書と貸借対照表を提出することも必要です。青色申告を行った場合、所得から最大65万円の控除を受けることができます。また家族への給与を経費として計上できるなど、さまざまなメリットを受けることが可能です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)とは、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度の一つです。拠出した掛金を自分自身で運用し、資産をつくっていく年金制度になります。

iDeCoでは、拠出した1年間の掛金が全額控除の対象です。フリーランスや個人事業主の場合、iDeCoの掛金の限度額が高いため節税効果が高くなります。掛金の限度額は月額68,000円、年額で816,000円となり、全額が所得控除です。(出典:iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】「iDeCoの仕組み」)

国民年金基金

国民年金基金とは、フリーランスや個人事業主向けの公的年金制度です。国民年金に上乗せして積み立てを行い、老後に受け取れる仕組みになっています。国民年金とは、20歳から60歳までの国民全員が加入する公的年金制度です。

国民年金基金に加入すると、掛け金が全額所得控除の対象となります。そのため節税対策として利用できると言えるでしょう。

国民年金基金は少額の掛け金から始めることができ、途中で掛け金を変更することも可能です。加入することで、一生涯受給することができます。(出典:国民年金基金連合会「加入によるメリット」)

ふるさと納税

ふるさと納税とは、支援したい自治体や生まれた故郷に寄付を行う制度です。ふるさと納税を実施すると、寄付した自治体から返礼品が送られたり、納税額が所得から控除されたりするメリットがあります。具体的に所得から控除される額は、寄付金から2,000円を引いた金額です。(出典:総務省「ふるさと納税」)

ふるさと納税の控除には、上限額が設定されています。上限額は、所得などによって異なる仕組みです。住民税の控除分と所得税の控除分を足した金額で計算します。以下のサイトで簡単に計算が可能です。(ふるさと納税ガイド「ふるさと納税の控除限度額 計算シミュレーション」) 

ふるさと納税を行った場合、確定申告することで寄付金控除が受けられます。しかしワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告をしなくても寄付金控除を受けることが可能です。ワンストップ特例制度を利用する場合は、事前に申請書の提出が必要となります。

ただし確定申告が必要な個人事業主や、ふるさと納税を6つ以上の自治体に行っている人は、ワンストップ特例制度を受けることができません。

小規模企業共済

小規模企業共済とは、中小機構が行っている積み立て型の退職金制度です。個人事業主や小規模企業の役員、経営者などが対象となります。小規模企業共済の掛金は、全額控除対象です。月々の掛金は500円単位で決めることができ、1,000円〜70,000円の範囲で設定できます。(出典:中小機構「小規模企業共済」)

経営セーフティ共済

経営セーフティ共済とは、取引先企業が倒産した場合に中小企業が経営難になったり、連鎖倒産したりすることを防止するための制度です。掛金の最大10倍を無保証人、無担保で借入することができますが、上限額が8,000万円です。掛金の月額は5,000円〜20万円の間で選ぶことができ、必要経費として計上することができます。(出典:中小機構「経営セーフティ共済」)

iDeCoや小規模企業共済は、所得から控除することで節税していましたが、経営セーフティ共済は必要経費に計上が可能です。そのため住民税や所得税に加えて、国民健康保険料も安くなります。一方iDeCoや小規模企業共済は控除となるため、住民税や所得税の節税は見込めますが、国民健康保険料は変わりません。経営セーフティ共済は、税金の種類を超えて節税効果があると言えるでしょう。

フリーランス・個人事業主が経費にできるモノは?

フリーランス 税金対策

経費とは、事業を運営していく上で必要となるコストや費用のことです。業務を行うために購入した書籍、クライアントとの打ち合わせのために移動した交通費などが挙げられます。収益から経費を引いた金額が所得です。所得が課税対象となるため、経費を正しく計上することは、節税対策になります。

フリーランスや個人事業主が計上できる経費としては、次のものが挙げられるでしょう。経費に関しては、上限の金額はありません。

勘定科目説明
租税公課固定資産税や事業税、印紙税、消費税、不動産取得税、自動車税などです。
修繕費建物やきかい、器具、試算などの修理のための費用です。
荷造運賃梱包費、荷造発送費、荷造運送費などです。
水道光熱費ライフラインに関する費用で、ガス代、電気代、水道料などです。
保険料自動車保険料、地震保険料、損害保険料などです。
消耗品費デジカメやタブレット、パソコンなどで価格が10万円未満のものです。
雑費クリーニング費用、引っ越し代、ごみ処理代などです。
法定福利費従業員を雇用している場合の経費、社会保険料などです。
賃金給与賞与や給与など、報酬として支払ったものが該当します。
地代家賃事務所や駐車場などの家賃、使用料などです。
外注費外部の企業や個人に発注した場合の費用です。
貸倒損失債権が法的に切り捨てられた場合、債権が回収できなくなった場合に計上します。
新聞図書費情報収集のための新聞、書籍、雑誌の費用です。
支払手数料代引き手数料や仲介手数料、振込手数料などです。
減価償却費耐用年数が決められている固定資産を計上します。
旅費交通費宿泊代、タクシー代、バスや電車などの公共交通機関の費用です。
通信費携帯電話料金、プロバイダ料金、固定電話代、切手代などです。
広告宣伝費雑誌やテレビなどのメディアに情報を掲載するための費用などです。
接待交通費売上貢献のための接待に関しての費用などです。
専従者給与生計が同じ親族や配偶者へ支払う給与です。

フリーランス・個人事業主が節税対策で注意する点

フリーランスや個人事業主は、事業と生活が混同してしまうことが多いです。支出は何でも経費として計上するのではなく、事業として利用した費用を経費として計上することが求められます。不明確な項目がある場合、税務調査で指摘される可能性も考えられるでしょう。内容によっては、追徴課税を科されることもあり注意が必要です。

自宅を事務所として利用している場合、事業で使用する分と生活で使用する分を正確に分けておく必要があります。光熱費や家賃などは決められたルールで計算し、事業で使用した分を割り出すことが必要です。この計算を家事按分と言います。家事按分の計算を行うことで正確な費用計上が可能となるでしょう。

経費計上が多いと税務署の調査に入られる場合がある

売上に対して経費の割合が高すぎると、税務調査の対象となる可能性があります。経費の割合が高いと「経費を水増ししているのではないか」「課税所得を不正に縮小しようとしているのではないか」など疑われてしまう可能性が高いでしょう。

売上に対する経費の目安は、約30%~60%と言われています。(出典:一人親方労災保険組合「一人親方の経費の目安は?」)

ただしこの数値は目安になり、範囲内に収まっていても不正な経費は計上しないことがよいでしょう。そのため経費として認められる項目を確認しながら、正しく計上していくことが大切と言えます。

経費が多いと売上がマイナスになることもある

収入よりも経費が多い場合は、赤字です。確定申告で青色申告を行っている場合、赤字は翌年から3年間の黒字と相殺ができる繰越控除を適用できるので、節税が可能となります。ただし青色申告を行う場合は、事前に承認申請書の提出が必要になったり、日々の経理業務で複式簿記に関する知識が必要になったりするなど、手間と時間が必要です。

確定申告には4つの表があり、内容に応じて記入が必要な表が異なります。

確定申告の表説明
第一表控除額や所得、収入などを記入する表です。第一表は必ず作成する必要があります。
第二表各種控除の詳細、所得の詳細、専従者情報などを記入する表です。第二表も必ず作成する必要があります。
第三表株式や建物、土地を売却した場合の譲渡所得がある場合に記入する表です。該当の所得がない場合は、作成不要となります。
第四表雑損失や赤字を翌年以降に繰越控除する場合に記入する表です。損失の申告を行わない場合は、作成が不要となります。

確定申告時に赤字の繰越控除を申告する場合、第一表、第二表に加えて、第四表や損失を証明するための書類の提出が必要となります。損失を証明するための書類として、以下の例が挙げられます。

  • 先物取引やFXにかかる損失
  • 特定投資株式にかかる譲渡損失
  • 上場株式等にかかる譲渡損失
  • 被災者事業用資産の損失

フリーランス・個人事業主が税金を払わないとどうなる?

フリーランス 税金対策

フリーランスや個人事業主は、納税を自身で行う必要があります。しかし事業の状況によっては、税金を払うことができない事態に陥ることも考えられるでしょう。そのような場合、どうすれば良いのか知っておくことが大切です。

延滞税

延滞税とは、期限までに税金を納付しなかった場合に発生する税金です。確定申告を期限内に実施していても、納付自体が遅れている場合も延滞税が発生します。延滞税の税率は最大14.6%ですが、特例基準割合を用いて計算した税率と比較し低い方を採用する仕組みです。

期日までに納税が困難な場合は、延滞税を加算して納付することで納税の期限を延長ができます。

無申告加算税

無申告加算税とは、申告の期限までに納税を実施しなかった場合に発生する税金です。期限を過ぎた後に自主的に申告したかのか、税務署からの指摘後に申告したのかによって、税率が変わります。

無申告加算税は、基本的には所得税が50万円までの場合は15%、50万円を超える場合は20%です。ただし期限後に自主的に申告した場合は、無申告加算税は5%となります。

過少申告加算税

過少申告加算税とは、期限内に確定申告した納税額が少なかった場合に発生する税金です。過少申告加算税は、不足している税金の10%が加算されます。ただし修正申告を自主的に行った場合は、過少申告加算税は発生しません。

また追加税額が、「50万円」と「確定申告額」の多い方を超える場合、超えた分に15%の課税が加算されます。

重加算税

重加算税とは、悪質な偽装や悪質な隠ぺい行為があった場合に発生する罰金です。申告を行っていた場合は35%、無申告だった場合は40%の税率が科されてしまいます。また最悪の場合、刑事罰を受ける可能性も考えられるでしょう。故意に納税を免れようとして無申告だった場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、もしくはこれらの両方が科されます。(出典:中村和洋法律事務所「加算税と刑事罰について」)

フリーランス・個人事業主が直面するインボイス制度とは

インボイス制度とは、消費税の納税、請求書の発行、受領が今までの方法から変わることです。2023年10月1日から適用される制度になります。

従来では、請求書のフォーマットは必要事項が記載されていれば自由でした。インボイス制度に切り替わると、インボイス制度登録業者は決められたフォーマットに従って請求書を発行することになります。この決められたフォーマットの請求書が「インボイス(適格請求書)」です。

インボイス制度が開始されると、個人事業主と取引している企業は、個人事業主からインボイスのフォーマットの請求書を受け取ります。仮にインボイスのフォーマットの請求書が受け取れなかった場合は、仕入税額控除が適用できません。そのため企業は、今まで行っていた節税ができなくなってしまいます。

個人事業主がインボイスのフォーマットの請求書を発行するためには、インボイス制度への登録が必要です。今まで個人事業主は、売上が1,000万円以下の場合は消費税10%を納める必要はありませんでした。しかしインボイス制度に登録すると、売上が1,000万円以下でも消費税10%を納める必要が出てきます。そのためインボイス制度に登録するかどうかは、慎重に決める必要があると言えるでしょう。

関連記事:フリーランスが対応すべきインボイス制度とは? 対応方法や影響を解説

フリーランス・個人事業主が税金対策を相談したい時は?

フリーランスや個人事業主が税金について相談する場合、所轄の税務署の窓口があります。所轄の税務署に電話をかけ、相談する方法です。対面での相談を希望する場合は、電話で相談予約を行います。(出典:国税庁「国税に関するご相談について」)

他の方法としては費用がかかりますが、税理士事務所に相談することも可能です。

インターネットにはさまざまな情報があるため、インターネットで調査する方法もあります。またインターネット上の相談サイトを利用することも可能です。相談ができる場所として、以下のようなサイトがあります。

  • 税理士ドットコム(https://www.zeiri4.com/
    確定申告や帳簿の記帳代行など、プロのコーディネーターが最適な税理士を紹介してくれます。
  • ジャストアンサー(https://www.justanswer.jp/
    専門家に24時間いつでも相談可能です。
  • FP相談(https://hokench.com/reservations/fp/
    お金の専門家であるファイナンシャルプランナーに相談が可能です。

よくある質問

ここでは、フリーランスや個人事業主の税金に関して、よくある質問をまとめています。

フリーランス・個人事業主が支払う税金を年収一覧として知りたいです。

フリーランスや個人事業主は、自身で税額の計算を行い、申請する必要があります。そのため納税すべき税金を把握して、節税対策を行っていくことが大切です。納めるべき税金の一覧を下表にまとめています。

税金説明
所得税年間の所得に応じて科される税金です。1月1日から12月31日の期間に得た所得を計算し、確定申告します。
復興特別所得税東日本大震災からの復興財源として確保された税金です。2013年から2037年の間は、申告と納付が必要となります。
住民税都道府県への「道府県民税」と市区町村への「市町村民税」の2つが組み合わされている税金です。住民税として一つにまとまった形で納税します。
国民健康保険料企業に属していない年金受給者、フリーランス、個人事業主などが加入する健康保険の保険料です。
個人事業税地方税法で決められている事業に該当する場合、納税する必要があります。ただし、1年間の事業所得が290万円以下の場合は納税義務がありません。
消費税一定の期間内の売上が1,000万円を超えた場合、消費税の納付義務が発生します。一定期間とは次の2つです。基準期間:前々年の1月1日から12月31日特定期間:前年の1月1日から6月30日
固定資産税家屋や土地に対して発生する税金です。事業で自宅を利用している場合は、事業で使っている割合の固定資産税を経費として計上することができます。
国民年金保険料フリーランスや個人事業主は、国民年金第1号被保険者の分類です。国民年金保険料は税金ではないですが、国民年金第1号被保険者は納める義務があります。

売上がいくら以上で法人化した方が良いですか?

フリーランスや個人事業主は、法人化が一つの分岐点と言えるでしょう。法人化した方が、税制上での優遇措置や信用度の向上などが見込めるためです。法人化とは、会社を設立して今まで個人事業主として行ってきた事業を引き継ぐことを指しています。

法人化する際の目安として挙げられるのが、1年間の売上が1,000万円を超えたときです。個人事業主としての売上が1,000万円を超えた場合、消費税の納付義務のある課税事業者となります。この時に法人化すると、最大2年間の消費税が免除される優遇措置を受けることが可能です。これは小規模事業者の事業促進を目的に、簡易的な手続きで消費税を免除できる制度で簡易課税制度という名称になります。

条件を満たすことで、翌年度の消費税の納付が不要となる場合もあります。その条件とは2年前の売上が無く、法人化の初年度の前半6ヵ月の売上が1,000円以下です。

ただしこの優遇措置は法人設立後2年以内で、資本金が1,000万円未満の場合に限られます。

前年度よりも今年度の売上が低く税金を納めるのが大変なのですが、支払う税金を安くすることはできますか?

支払う税金を安くするには、次のような方法があります。

  • 確定申告時に青色申告をすることで、最大65万円の節税が可能
  • 少額減価償却資産の特例を利用し、30万円以内の備品を一括で経費計上
  • 短期前払費用の特例を利用し、サービス利用料などの前払費用を経費計上

また長期的な節税の方法としては経営セーフティ共済への加入、小規模企業共済への加入、ふるさと納税の実施、iDeCoの利用なども有効な方法です。

まとめ

今回はフリーランスとして知っておくべき税金の知識、節税方法、2023年10月に施行されるインボイス制度などについて紹介しました。フリーランスは、確定申告で税金を申告します。そのため税金の知識がない場合、必要以上の税金を納めてしまう可能性も考えられるでしょう。

事業を継続していく上では税金の知識や節税方法を身につけ、収益を確保することは重要事項となります。また2023年10月から始まるインボイス制度についても、理解しておくことが大切です。事業収益に関わってくるため、節税方法を知っておくようにしましょう。

フリーランス節税に関する重要用語

ここでは、節税に関する重要用語を説明します。

用語説明
消費税サービスや商品を購入した際に発生する税金。
所得税1年間の所得に対して発生する税金。
住民税住んでいる地域に関する費用を負担するための税金。
個人事業税個人事業主が都道府県の行政サービスを利用するための税金。
控除所得から差し引いて計算すること。全部で14種類の控除がある。基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険控除、地震保険料控除、寄付金控除、障害者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除。
経費事業を行う上で必要となる費用のこと。さまざまな種類がある。例えば、消耗品費、事務用品費、新聞図書費、通信費、会議費、雑費、交通費、広告宣伝費、外注費、交際費など。
確定申告1年間の所得と税金を算出し、国に報告する手続きのこと。個人事業主などは確定申告する必要がある。
青色申告確定申告の種類の1つ。1年間の収入や費用の取引状況を複式簿記で記録した帳簿が必要となる。節税のメリットがある。
白色申告確定申告の種類の1つ。帳簿は複式簿記である必要はない。節税のメリットがない。
個人型確定拠出年金(iDeCo)公的年金に加えて給付を受けられる私的年金制度。
ふるさと納税支援したい自治体や生まれ故郷に寄付を行う制度。
小規模企業共済個人事業主や小規模企業の役員、経営者を対象にした、積み立て型の退職金制度。
経営セーフティ共済取引先が倒産した場合に連鎖倒産を防ぐための制度。
インボイス制度消費税の仕入税額控除を行う制度で、2023年10月1日から施行される。仕入税額控除とは売上時に受け取った消費税から、経費で支払った消費税を引くこと。