近年新しい働き方として、フリーランスが着目されています。フリーランスは企業に属さないため、自身のスキルや人脈で案件を確保しなければいけません。一方フリーランスでは、休日を自由に設定したり働く場所や時間に縛られないなど比較的自由な働き方ができます。

しかし会社員と比較して、収入が安定していないフリーランスの年金制度はどうなるのでしょうか。ここでは、フリーランスの年金についてどのような制度があるのか解説します。

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フリーランスが加入する国民年金とは?

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会社員の場合、厚生年金に加入することになります。しかし企業に所属しないフリーランスは、厚生年金ではなく国民年金に加入することになります。ここでは、国民年金と厚生年金との違いや罰則などについて紹介します。

厚生年金と国民年金の違い

日本の公的年金というのは、2層構造になっています。第1層が国民年金、第2層が厚生年金になっています。フリーランスが該当するのは第1層の国民年金のみになります。

第1層の国民年金は20歳になったら、国民全員が納める必要があります。20歳から60歳まで40年間納める制度であり、現在は毎月約16,520円を納付する必要があります(2023年度時点)。学生や一時的に失業した人など年金を支払う余裕がない人には、保険料の納付を一時的に猶予したり、納付を免除したりする制度があります。

第2層の厚生年金は、会社などに勤務している人が加入する年金制度です。保険料は月ごとの給料に対して定率となっているため、個人で支払う保険料は変動します。また、支払う保険料は事業主が半額を負担してくれます。このため、受け取れる年金額も個々人によって変わります。

 国民年金厚生年金
加入者日本国民全員常時従業員を使用する会社に勤務している70歳未満の一定の人
年金額年収によらず、一定年収によって変動する
受給額年金の支払い年数に比例支払った年金額に比例

 出典:厚生労働省「 日本の公的年金は「2階建て」」

国民年金を支払わない場合の罰則は?

国民年金を支払わない場合、以下のような罰則が発生する恐れがあります。

財産を差し押さえられる

国民年金の支払いが滞っているのにも関わらず保険料の支払い能力がある場合、強制徴収が行われる可能性があります。

未納した後すぐに、財産の差し押さえが発生するわけではありません。日本年金機構から数回程度届く催告状を放置すると、督促状が届きます。この督促状の期日までに支払いを行わなかった場合、給与や不動産などの差し押さえが実行されます。

延滞金が発生する

国民年金を督促状の期日までに支払わない場合、延滞金が発生します。延滞金に関しては、納付期限から超過した日付によって異なります。具体的には本来の支払期日の翌日から3ヶ月以内の場合、利率3.8%の利息が取られます。それ以降の場合には、利率14.6%の利息が取られます。

これらの罰則を受けないようにするためにも、年金を支払うことができない場合には保険料免除の手続きや保険料納付の猶予申請をしましょう。

また上記の罰則以外にも国民年金は、10年以上納めないと受け取ることができません。最大10年までさかのぼって追納ができるので、納付期間が10年に満たない人は追納することをおすすめします。

関連記事:【初心者必見】フリーランスと個人事業主の違いについてわかりやすく解説

収入が少なく国民年金が払えない時の対処方法

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フリーランスは収入が安定しないことも多く、場合によっては国民年金を支払うことができない人もいます。ここでは、年金の納付を猶予する方法や免除する方法に関して紹介します。

国民年金が免除される場合

国民年金には、免除制度があります。免除制度では1/4免除から全額免除まで4段階に分かれています。免除の場合、年金の受給額や条件は以下の通りです。

例えば、30歳、独身のフリーランスエンジニアで所得が150万円の場合、1/4免除の場合に該当するので、支払う保険料は3/4となり、この間の年金受給額は7/8となります。 

 もらえる年金額免除条件
※前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
全額免除の場合保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
3/4免除の場合保険料を全額納付した場合の年金額の8分の588万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
1/2免除の場合保険料を全額納付した場合の年金額の8分の6128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
1/4免除の場合保険料を全額納付した場合の年金額の8分の7168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

国民年金の支払いに猶予が与えられる場合

国民年金には、支払いを免除する制度や支払いを猶予する制度もあります。これらの制度では老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間に換算されます。しかし、後ほど追納しないと老齢基礎年金の受給額が増えることはありません。国民年金の支払い猶予を行った場合には、必ず後で保険料を追納するようにしましょう。

また支払いを猶予してもらえる条件は前年の所得が(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円以内であり、全額免除の場合と条件は変わりません。

フリーランス年収毎の国民年金支払額は?

フリーランスの場合、国民年金の支払額はいくらになるのでしょうか。実は国民年金の支払額は年収によって変わることはありません。この国民年金の2023年度の支払額は月額16,520円となっております。保険料は毎年変動しますが、ここ7〜8年間は16,000円台前半で推移しています。

また国民年金には、前納という制度もあります。前納制度を活用すると、割安で保険料を納めることができます。余裕があるフリーランスはこの制度を活用して、支払額を抑えることも可能です。例えば、2023年の2年間分前納を口座振替で行った場合、総支払額は385,900円になります。これは毎月16080円程度納付する計算になり、毎月納めた場合に比べて約440円お得になります。6か月前納からあるので、活用を検討してみるとよいでしょう。 

出典:日本年金機構「国民年金保険料の前納」

フリーランスが国民年金以外で老後資金を増やす方法は?

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フリーランスには国民年金がありますが、受け取れる額は2023年時点で月6.6万円程度です。生活するには心もとない金額と言えるでしょう。そのため、国民年金以外にも老後の備えをしておきたいものです。ここでは、フリーランスが活用できる老後資金を増やす方法を紹介します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDecoとは国民年金や厚生年金のような公的年金と異なり、私的年金として資金を積み立てることができる制度です。公的年金とは異なり、加入は任意で、積立金額の設定や掛金の運用までをすべて自分で行う制度になります。フリーランスのような自営業や会社員、専業主婦など多くの方が加入することができます。

拠出できる掛金は人によって異なり、フリーランスの場合、最大毎月68,000円まで拠出することが可能です。この拠出金はすべて非課税になるため、多くの節税効果が見込めますが、その一方で原則60歳以上にならないと引き出せないというデメリットもあります(2023年時点)。

毎月一定額を拠出して運用するため、iDecoに加入している期間が長ければ長いほど複利の効果を得ることができ、老後資金が増えます。しかし、日々の生活にもゆとりは必要です。掛金は調節することができるので、日々の生活を見て掛金を調整しましょう。

国民年金基金

会社員の年金は、国民年金と厚生年金の2層構造になっています。一方、フリーランスには厚生年金という2層目は存在しません。国民年金基金はフリーランスなど自営業の方の2層目に該当する商品になります。加入期間は20歳〜60歳(国民年金に任意加入している方は65歳まで加入可能)です。掛金は最大68,000円となっており、口数制度となっております。

ただし、iDecoと併用する場合には2つ合わせて最大68,000円になる点には注意をしましょう。1口の金額は性別や年齢によって異なりますが、30歳男性で加入した場合、月10,740円を拠出することで、老後に月2万円を受け取ることが可能です。また、拠出した掛金は終身年金が基本となっており、確定拠出型でも受け取ることができます。

拠出した金額はiDecoと同様に非課税になるため、多くの節税効果も見込めます。しかし、国民年金基金も65歳以上からではないと引き出せません。日々の生活にゆとりを持たせるためにも掛金は、無理ない範囲にするように注意しましょう。iDecoとの違いは誰が運用するかです。iDecoは個人で運用することになりますが、国民年金基金は年金機構によって運用されます。

付加年金

付加年金とは毎月の国民年金保険料に400円を上乗せして払い込むと、将来的に受け取れる年金額に払い込んだ月数分の金額が加算される年金制度のことです。付加年金を利用することで、老後の基礎年金の受給額が永久に増額されるので、老後ゆとりをもって生活したい場合には拠出をした方がよいでしょう。

加入できる期間は20歳〜60歳までの最大40年間となっており、年金を受け取ることができるのは65歳からになります。

付加される年金額は200円×付加保険料納付月数となっており、40年加入したとしても受け取れる金額は96,000円しか増えません。国民年金基金ほどの増額は見込めないため、少し老後にゆとりを持たせたい場合に、活用するとよい制度と言えるでしょう。国民年金基金と付加年金の両方に加入ができない点も注意が必要です。

小規模企業共済

個人事業主または会社の役員が事業をやめたり、退職したりした場合に、生活の安定や事業の再建を図るための準備をする制度です。経営者や個人事業主の退職金制度と考えるとよいでしょう。

掛金は月額で1,000円から70,000円までの間で、500円単位で設定することが可能です。この掛金は全額所得税控除の対象となり、多くの節税効果が見込めます。

受け取れる掛金の金額は、共済金を受け取れる条件によって異なります。例えば、事業をやめた場合や全額金銭出資により個人事業を法人化した場合にのみ受け取れます。その条件の場合、5年間で60万円を拠出していれば、621,400円を受け取ることが可能です。

フリーランスは、いつでも辞められるのも1つのメリットです。老後以外にも資金を受け取りたい場合には、小規模企業共済を利用するのもよいでしょう。 

関連記事:フリーランスの確定申告はいつまでに? 手順や提出方法について紹介

よくある質問

ここからは、フリーランスが持つ国民年金に関してよくある疑問を解説します。

国民年金を未納しているのですがデメリットはありますか?

国民年金を未納している場合、以下のような罰則がある可能性があります。

財産を差し押さえられる

督促状などが届いているのであれば、財産を差し押さえられる可能性が高いです。

延滞金が発生する

現在、国民年金を払っておらず、今後支払う場合には延滞金が発生する可能性があります。延滞金は督促状の期日までに支払わなかった場合に発生します。

また、これらの罰則以外にもそもそも国民年金を支払っていない場合には、年金を受け取ることができません。老後の資金を貯めていない場合には、老後苦しい生活が待っていることになります。老後の資産を自分で構築しようと思っても、一生涯使えるお金を確保するのは難しいでしょう。

一生受け取れるお金を入手するためにも、老後の生活を楽にするためにも国民年金に加入しておくことをおすすめします。

国民年金を追納した方がよいですか?

国民年金は2023年の場合で、満額月66,250円を受けとることができます。1年分国民年金を納付していないと、約1650円減額されてしまいます。国民年金の月額料金は16,500円程度のため、1年分追納した場合には、約12年分の年金を受給すれば元を取ることが可能です。

日本人の平均寿命は男性でも81.47歳で、16年程度は年金を受け取る計算になります。十分元を取れる可能性が高いと言えるでしょう。そのため、国民年金は生活にゆとりがあるのであれば、追納したほうが良いです。

国民年金の納付方法が知りたいです。

会社員や公務員に勤めている場合には、給与振り込みの際に自動で引かれて、納付されています。一方フリーランスの場合、自ら納めなければなりません。納付の方法は大きく2つあり、預金口座から保険料を毎月自動的に引き落とす口座振替と日本年金機構から送られてくる納付書を使って納める方法です。

口座振替では毎月自動で納付することができ、納付忘れがないメリットや前納割引制度も活用できます。引き落としに手数料もかからないので、口座振替がおすすめです。

まとめ

ここまで、フリーランスが国民年金およびそれ以外の老後資金を増やす方法を紹介しました。フリーランスの場合、厚生年金に加入できないため国民年金のみだと最大月6.6万円程度の年金しか受け取れません。そのためiDecoや国民年金基金、小規模企業共済などを活用して老後ゆとりをもった生活を送れるように資産形成を行いましょう。

フリーランス年金に関する重要用語

意味
所得「収入」から「必要経費」を引いて残った額を所得と言います。
老後ゆとりのある生活老後ゆとりのある生活を行うためには夫婦2人で約月38万円程度必要です。
国民年金では夫婦2人で受け取れる金額は約13万円のため、約25万円程度不足する計算になります。
被保険者国民保険の被保険者は以下の3つに分かれます。
・第1号被保険者:学生、自営業、農林漁業者など
・第2号被保険者:会社員、公務員など
・第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者