再就職手当とは会社を退職して、他社に転職した際に行政からもらえるお金になります。しかし会社員からフリーランスを目指す場合でも、再就職手当をもらえることを知っていますでしょうか。
この記事では再就職手当の概要を紹介して、フリーランスが再就職手当を受け取る条件を解説します。
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再就職手当とは?
再就職手当とは、雇用保険の受給資格を持っている人が所定給付日数が1/3以上残っている間に別会社への就職を決めたり、開業を行ったりした場合に受給できる手当のことです。
再就職は可能な限り早く行うべきですが、雇用保険の受給資格(失業保険)をもらえている人は失業手当を受け取れる所定給付日数のぎりぎりまで就職を遅らせることも可能です。
しかし失業保険を多くの人が受給すると、失業率の上昇や行政の財源圧迫に繋がり兼ねません。再就職手当は早期に就職すると、お祝い金として支給することで早期就職を促し、離職者の再就職率を高める制度になります。
再就職手当では、以下のような金額を受け取ることができます。
条件 | 給付金額 |
所定給付日数が2/3以上残っている | 基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×60% |
所定給付日数が2/3未満で1/3以上残っている | 基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×50% |
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フリーランスが再就職手当を受け取るための条件は?
再就職手当は早期に別会社への就職を決めたり、開業を行ったりした場合にもらえる手当であり、フリーランスとして活動した人も受け取ることが可能です。しかし、フリーランスが再就職手当を受け取るためには条件があります。
再就職手当の受給条件は大きく8つありますが、ここではポイントとなる3つの条件を紹介します。
1年を超えて勤務することが確実だと認められること
フリーランスであれば、1年以上事業を続けられるという見込みがあるという継続性のあることがポイントになります。再就職手当の申請を行ってから約1か月後に、電話で事業継続の確認をされるので回答できるようにしておきましょう。
待機期間の満了後に、就職もしくは事業を開始したこと
再就職手当を受け取るためには、待機期間を満了しなければなりません。待機期間とは、失業保険の受給資格決定日から7日間を指します。この間に開業届を出してしまうと、再就職手当を受け取れなくなってしまうので注意しましょう。
前3年以内に再就職手当などの支給を受けていないこと
前3年以内に再就職手当または、常用就職支度手当を受け取っていないことが条件になります。事前に条件に該当していないことを確認しましょう。
フリーランスが再就職手当を受ける手続き方法
再就職手当は、ハローワークに行くだけでは受給することができません。再就職手当の受給に関して、適切に申請フローを通す必要があります。ここでは、フリーランスが再就職手当を受け取るための手続き方法を紹介します。
離職票の発行
再就職手当を受け取るには、失業保険の受給申請を行います。ハローワークに離職票を提出するために、退職する企業から離職票を発行してもらいましょう。
離職票は雇用保険に加入していることが条件です。企業は原則、週20時間以上かつ31日以上継続して働く見込みがある労働者に対して、雇用保険に加入させる義務があります。そのため多くの場合、会社員であれば雇用保険に加入していることでしょう。
会社によっては退職時に離職票を準備してくれることも多いですが、事前に依頼しておく方が良いでしょう。
ハローワークで求職手続き
離職票の発行が完了したら、ハローワークで求職手続きを行います。手続きを行う際には、以下の書類が必要になります。事前に該当する書類があるか、確認してからハローワークに行きましょう。
- 退職した会社から受け取った離職票
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、マイナンバー記載の住民票など)
- 身元確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
7日間待機
再就職手当を受け取るためには、待機期間を満了しなければなりません。この期間が7日間(土曜日、日曜日、祝日含む)になります。求職手続きを行ったら、7日間待機しましょう。
フリーランスになるためには開業届だけでなく、案件獲得の準備、名刺作成、ポートフォリオ作成などやるべきことが多数あります。この期間を待機するだけの時間と捉えずに、フリーランスとしての生活を開始できるように準備の時間に充てるとよいでしょう。
ハローワークの説明会に参加
ハローワークで求職手続きが完了したら、次は雇用保険説明会に参加しなければなりません。この雇用保険説明会では求人倍率や人気職種など、最近の仕事の動向を紹介をしています。また、仕事をしないと業務能力が下がってしまうことをビデオなどで紹介し、早期就職を促されたりします。またこの説明会では、雇用保険受給資格者証明など失業手当の申請に必要な書類を受け取ることができます。
雇用保険説明会の日程は、ハローワーク側から指定されるので決められた日に行くようにしましょう。初回の失業認定日の指定を受けることで、再就職手当を受け取ることが可能です。
最低1ヶ月就職活動
自主都合退職をした場合には、待期期間満了後1ヶ月以内はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介で就職した場合にしか、再就職手当を受け取ることができません。フリーランスとして再就職手当をもらうためには、この1ヶ月間は就職活動を行っているという実績が必要になります。
具体的な就職活動を進める必要はありませんが、最低限ハローワークに通って企業に就職する意志を見せましょう。
開業届を税務署に提出
1ヶ月就職活動を行ったら、実際にフリーランスとして活動ができます。フリーランスは、開業届を出さずとも活動することができます。しかし再就職手当は、開業届を出さなければ受け取ることができません。
開業届を出すことで青色確定申告が行えるようになり、最大65万円の税金控除を受けることもできます。フリーランスの方は、開業届を出した方が節税の面でも良いでしょう。
開業届は、国税庁の個人事業の開業届出・廃業届出等手続からダウンロードすることができます。個人事業の開業届出・廃業届出等手続きは、近くの税務署で受け取ることもできるので、どちらかの方法で書類を準備しましょう。開業届に必要事項を記入したら、近くの税務署に提出しましょう。提出時には以下の書類も必要となります。
- 免許証などの身分証明書
- マイナンバーカードやマイナンバー決定通知書などのマイナンバーを確認できる書類
出典:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
ハローワークに再就職手当の申請
開業届を税務署に提出したら、ハローワークに再就職手当の申請を行いましょう。以下の書類以外にも1年以上事業を継続が可能であることの証明として、クライアントとの業務委託契約書などの提出を求められる可能性があります。
申請に必要な書類は、フリーランスとして開業した業種や地域のハローワークによって変わる可能性があります。ハローワークの担当者に相談して、必要な書類を確認するようにしましょう。申請に必要な書類は以下の通りです。
- 雇用保険受給資格者証
- 再就職手当支給申請書
- 開業届のコピー
フリーランスが再就職手当を申請する際に必要な書類
フリーランスが再就職手当を受け取るためには業務委託契約書だけでなく、雇用保険受給資格者証と再就職手当支給申請書が必要になります。ここでは、2つの書類の詳細について解説します。
雇用保険受給資格者証
雇用保険受給資格者証とは再就職手当だけでなく、失業手当を受け取るために必要な書類になります。失業手当は、失業状態の人が安心して就職活動を行い早期就職を実現するために、経済的に安定を提供する手助けをしています。この書類は失業認定日に毎回必要となり、書類がなければ失業手当を受給できません。
雇用保険受給資格証は、ハローワークで雇用保険の受給手続き中に発行される書類です。退職後ハローワークで「求職申し込み手続き」を行い、受給資格が決定した場合に受け取ることができます。雇用保険受給資格証を受け取るタイミングは、ハローワークの説明会(雇用保険説明会)の時になるため、大切に保管しましょう。
再就職手当支給申請書
再就職手当支給申請書とは、再就職手当を受け取る際に必要な書類です。再就職手当支給申請書は、受注要件を満たしているかを判断するための重要な書類です。
氏名や住所など自分で書く部分と、事業主の証明として事業者(再就職先)に書いてもらう部分があります。事業者の部分はフリーランスとして働くことになるため、自分の情報を記入するようにしましょう。
また、再就職手当支給申請書はハローワークインターネットサービスからのダウンロードやハローワークで受け取ることもできます。ハローワークで受け取る場合には、、以下の書類が必要です。
必要書類 | 受け取るタイミング |
採用証明書 | 雇用保険の受給手続きのときに受け取れます。 |
雇用保険受給資格者証 | 雇用保険説明会で受け取れます。 |
失業認定申告書 | 雇用保険説明会で受け取れます。 |
参考:ハローワークインターネットサービス「再就職手当支給申請書」
再就職手当を受給する際の注意点
フリーランスが再就職手当を受給するためには、退職して他の会社に転職する場合よりも手続きが煩雑になります。ここでは、フリーランスが再就職手当を受給するときの注意点を2つ紹介します。
失業保険の残日数は不足していないか
フリーランスや他の会社に転職する場合でも、失業保険の残日数が不足していないかが重要です。再就職手当の所定給付日数は、基本手当がもらえる日数になります。
例えば10年間被保険者として勤務をしていた場合には、退職から40日までは基本手当日額の70%を受け取ることが可能です。退職後80日までは、基本手当日額の60%を受け取ることが可能です。所定給付日数は、被保険者として働いていた期間で変わるので注意しましょう。
<自己都合退職の場合>
被保険者であった期間 | ||||||
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | ||
区分 | 全年齢 | ― | 90日 | 120日 | 150日 |
<会社都合退職の場合>
被保険者期間 | ||||||
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | ||
離職時の年齢 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
<受け取れる金額の割合>
離職時の年齢 | 賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
29歳以下 | 2,320円以上4,640円未満 | 80% | 1,856円~3,711円 |
4,640円以上11,740円以下 | 80%~50% | 3,712円~5,870円 | |
11,740円超12,880円以下 | 50% | 5,870円~6,440円 | |
12,880円(上限額)超 | ― | 6,440円(上限額) | |
30~44歳 | 2,320円以上4,640円未満 | 80% | 1,856円~3,711円 |
4,640円以上11,740円以下 | 80%~50% | 3,712円~5,870円 | |
11,740円超14,310円以下 | 50% | 5,870円~7,155円 | |
14,310円(上限額)超 | ― | 7,155円(上限額) | |
45~59歳 | 2,320円以上4,640円未満 | 80% | 1,856円~3,711円 |
4,640円以上11,740円以下 | 80%~50% | 3,712円~5,870円 | |
11,740円超15,740円以下 | 50% | 5,870円~7,870円 | |
15,740円(上限額)超 | ― | 7,870円(上限額) | |
60~64 歳 | 2,320円以上4,640円未満 | 80% | 1,856円~3,711円 |
4,640円以上10,570円以下 | 80%~45% | 3,712円~4,756円 | |
10,570円超15,020円以下 | 45% | 4,756円~6,759円 | |
15,020円(上限額)超 | ― | 6,759円(上限額) | |
65歳以上 | 2,320円以上4,640円未満 | 80% | 1,856円~3,711円 |
4,640円以上11,740円以下 | 80%~50% | 3,712円~5,870円 | |
11,740円超12,880円以下 | 50% | 5,870円~6,440円 | |
12,880円(上限額)超 | ― | 6,440円(上限額) |
給付制限期間中に開業を行わない
フリーランスとして活動することが決まっている場合は、開業届を出して仕事を行いたいと思うでしょう。しかし再就職手当を受け取るためには、待機をしなければなりません。待機期間は、自主都合退職の場合で1ヶ月と7日間になります。この期間に開業届を出して活動してしまうと再就職手当の受給要件を満たさず、再就職手当を受け取ることができません。所定給付日数を把握して、開業届を出すことも大事です。しかし、期間を誤ると受給できないことがあることを認識しておきましょう。
待機期間にはフリーランスとして案件を受注できる体制を整えたり、名刺など身の回りの準備をしたりする期間に充てるとよいでしょう。
関連記事:【初心者必見】フリーランスと個人事業主の違いについてわかりやすく解説
よくある質問
ここではフリーランスとして再就職手当を受け取る際に、よくある質問を3つ紹介します。
再就職手当と失業保険の違いはなんですか?
失業保険とは公的保険制度の一種で、正式には「雇用保険」と言います。失業して失業認定を受けた日から就職が決まるまでの間、毎月受け取ることができる手当です。
再就職手当は早期就職を促す制度であり、所定給付日数の1/3以上残して就職やフリーランスとして開業した場合に1度だけ受け取ることができる手当になります。
再就職手当はフリーランスでも受け取ることができますが、フリーランスを目指している場合、失業保険は受け取ることができません。失業保険は就職の意思がある人の生活をサポートするための保険制度だからです。
<失業保険を受け取ることができる事例>
退職してから就職活動を行い、その結果フリーランスになる道が見えてきた場合
<失業保険を受け取ることができない事例>
フリーランスになることを前提に退職し、開業の準備に時間が掛かった場合
再就職手当の支給金額の一覧を知りたいです。
再就職手当の支給額は以下のようになります。
条件 | 給付金額 |
所定給付日数が2/3以上残っている | 基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×60% |
所定給付日数が2/3未満で1/3以上残っている | 基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×50% |
ここで明確になっていないのは基本手当日額です。この基本手当日額は以下のようにして計算できます。
- 賃金日額(退職前6カ月間の給与総額÷180)を計算する
- 基本手当日額を計算する
基本手当日額=賃金日額×45~80%(賃金日額と年齢によって割合が異なります)
また基本手当日額の上限は決められており、以下のようになっています。
年齢 | 上限額 |
30歳未満 | 6,760円 |
30歳以上45歳未満 | 7,510円 |
45歳以上60歳未満 | 8,265円 |
60歳以上65歳未満 | 7,096円 |
例えば、月収30万円で35歳で退職した人が、所定給付日数が120日で残り60日の状態で就職が決まったとしましょう。その場合、支給残日数の賃金日額は1万円、基本手当日額は5,735円程度となります。そのため、おおよそ再就職手当は以下の金額を受け取ることができるようになります。
再就職手当=5,735円60日50%=172,050円
再就職手当をもらっている際の雇用保険はどうなりますか?
フリーランスになると雇用保険には、加入できません。雇用保険は「雇用されている方」を保護するための制度のため、自身で事業を行っている個人事業主は、対象外として扱われるからです。再就職手当をもらっている場合であっても、この仕組みは変わりません。
そのためフリーランスになる場合は、退職したタイミングで会社に属している雇用保険から国民健康保険に変更する手続きをしましょう。
まとめ
ここまでフリーランスが、再就職手当を受け取るための条件や再就職手当を受け取るための手続きなどを紹介しました。フリーランスとして開業をする場合でも、手順を踏むことで再就職手当を受け取ることができます。フリーランスとして駆け出しの人は、再就職手当は活動を支える大きな資金になるでしょう。制度を活用して、フリーランスの生活をスタートさせましょう。
フリーランス再就職手当に関する重要用語
ハローワーク | 仕事を探している方や求人事業主の方に対して、さまざまなサービスを無償で提供する、国(厚生労働省)が運営する総合的雇用サービス機関です。全国で500カ所以上の施設があります。 |
自己都合退職 | 結婚や転職など、自身の都合によって会社を退職するケースです。場合によっては退職金を減額される可能性もあります。 |
会社都合退職 | 解雇や退職勧奨、倒産や事業整理といった会社側の都合によって雇用契約を終了することを指します。会社都合退職の場合、退職金が減額される可能性は低いです。 |
雇用保険制度 | 労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方等に対して、失業等給付を支給します。 |